2020/1/17

日本橋の老舗和紙専門店「小津和紙」 “免税売上”が全体の6分の1!急伸のワケとは?

東京・日本橋に店を構える和紙専門店「小津和紙」は、承応2年(1653年)に、伊勢松阪から江戸に出てきた小津清左衛門長弘が、この地に紙問屋を開いたのが始まりで、現在の店舗は1982年、和紙の魅力を広く伝えるためにオープンした。

手すき和紙の豊富な品揃えに加え、和紙の可能性の発信も

小津和紙 副店長 木村まど可氏

同店の木村まど可副店長は「1300年以上の歴史を持つ、伝統工芸の手すき和紙に力を入れている。店には全国の和紙が揃っていて、和紙の可能性を多くの人に発信する場でもある」と話す。

店舗は3階建てで、1階には、手すき和紙のほか工芸紙、書道用品、和紙を生かした小物や雑貨などが並ぶ。また同じフロアには、手すき和紙の体験ができる工房も設けられている。

2階には、「小津文化教室」と名付けられたカルチャー教室があり、書道、和紙、絵などに関わる約80講座が年間を通じて開かれている。また隣接するギャラリーは、絵画、書道、ちぎり絵など幅広いジャンルの展示会に利用されている。

3階は、全国各地の手すき和紙や和紙を使用した作品があり、手すき和紙の製造工程や小津和紙の歴史などを知ることができる史料館となっている。

以前は、来店する客層もちぎり絵や書道などの教室関係者や伝統工芸を趣味で楽しむ人、装飾品や内装の職人など、「買いたいモノ」の目的意識を持った日本人の来店がほとんどであった。

免税店化以降、外国人客が急増 お土産需要も増加

そんな中、同店は2015年2月、外国人旅行者などの非居住者に、一定の条件の下で消費税を免税する「免税店」としての許可を得た。観光庁が、免税店の増加を目指して、2014年10月に制度改正をした直後で、まだ免税店は少なく、日本橋エリアでは先陣を切っての取り組みであった。

木村副店長は「外国人のお客様が多く来店し、免税の問い合わせを受ける機会が増えたのに加え、今後、訪日旅行者の増加が見込まれることから、免税店化が必要と判断した」と話す。

同店は、扱う商品の専門性が高いため、外国人客も仕事や趣味で和紙を使う人たちがほとんどで、一般の観光客は少なかった。しかし日本の伝統工芸が注目されるようになると、免税制度によるお得感もあり、通訳やガイドの案内、観光バスのツアー、口コミなどをきっかけに来店する外国人客が増加。客層は若者やファミリーにも広がった。

木村氏は、「10年前は珍しかった海外からのお客様がどんどん増え、今や外国人が来店しない日はないといっても良い。来店時間は午前中が多く、店内が外国人客だけということもある」とここ10年の変化を振り返る。

そのため、みやげ物の需要が増え、ラッピングやインテリアにも使える華やかな色彩の友禅紙や筆ペン、“金封”や折り紙など手ごろな価格の商品の人気が高い。趣味でちぎり絵や版画、魚拓などを楽しむ外国人も増え、そのための和紙を買い求める旅行客も増えた。

海外に和紙を持ち帰るための紙筒。和紙と一緒に購入する外国人客が多い

また和紙は、海外に持ち帰る際、折り目がつかないよう梱包するのに手間がかかる。そこで3年前、友禅紙を巻いた持ち帰り用の紙筒や箱を商品として販売したところ、一緒に購入する人が多く、“プラス一品”につながる効果も生まれた。

客単価は、一人当たり1~2万円程度が中心だが、和紙のまとめ買いで2~30万円ほどに及ぶ人もいる。去年の売上に占める免税販売の割合は、2016年と比較すると約1.8倍で、現在では売上全体の約6分の1を占めるという。

また近年は訪日旅行者の消費傾向が「モノ消費」から「コト消費」にシフトしていると言われるが、この店が実施している手すき和紙の手作り体験に参加する人も急増しているそうだ。

会話は外国語の定型文と通訳デバイスで対応 免税処理も5分で完了

免税店化に向けては店舗のある中央区(東京)が開催する「外国人旅行客おもてなし接客講座」を全てのスタッフが受講した。英語を話せるスタッフもいるが、基本的には全員がこの講座で学んだ英語と中国語の接客用語を駆使し、身振り手振りを交えて応対する。

英語や中国語が通じない場合は、東京都が運営する多言語コールセンターサービスを利用することもあったが、今は市販の通訳デバイスを活用している。

ただ、和紙などに関する商品説明は専門的な内容も多く、例えば「この紙はにじみます」などの説明は自社でツールを作成した。「それ以上に専門的な説明が必要な人は、通訳を伴って来店するので、言葉で困ることはほとんどない」と木村副店長。

免税処理は、通常使用しているPOSレジ2台で行う。免税制度を説明するツールも掲示しているが、口頭でも説明する。買上金額が免税対象額の5000円に満たない場合は、不足額を案内すると、ほぼ全員が買い足しをするため、結果的に売り上げ増につながり、ここでも免税店化の効果が生まれている。

免税手続きに必要な購入記録票は手書きで行い、パスポートに添付する作業が必要だが、「慣れると一連の作業は5分程度で完了し、決済はほぼクレジットカードなので、業務負担は大きくありません」と木村副店長。

免税店のロゴは、ビルに入居する他の企業に配慮して、入り口には掲示せず、レジカウンターで掲出するのみで、外見上、免税店であることをあまり強調してはない。ただ英語版のホームページと、日本語と英語を併記したパンフレットには、その旨を記載して、外国人客への周知を図る。近々、SNSによる情報発信のため、インスタグラムも立ち上げる予定だ。

今年、東京オリンピック・パラリンピック大会が開催され、今後さらに増加するとみられる外国人客のニーズを狙って、伝統ある老舗も時代の変化に合わせて進化を続けている。