2020/3/31

4月1日からの免税「電子化」で、何が変わる?

2020年4月1日から、免税販売手続きの電子化がスタートする。2021年9月末まで移行猶予期間が設けられているが、2021年10月1日からは、電子化対応がされていないと免税販売ができなくなる。免税店は早急な対応が必要だが、電子化の準備や手続きは意外に簡単でメリットも多い。

作成が面倒だった「紙」の購入記録票が廃止に

これまで、店舗における免税品販売手続きは、<①購入者からパスポートなどの提示を受ける⇒②免税販売の対象者かどうかを確認⇒③購入者から誓約書の提出を受ける⇒④購入記録票を作成してパスポートにホッチキスでなどで添付し、割印を押す⇒⑤免税対象品を引き渡す⇒⑥購入者誓約書の保管>という流れであった。

購入者は出国時に税関に購入記録票を提出することで、購入品を国外に持ち出せる。この一連の手続きの中で、手間と時間がかかっていたのが、「紙」の購入記録票の作成である。

国内に約5万2000店ある免税店の半数以上は手書きによる作成で、購入者からは、時間がかかりすぎるとの不満の声が多くあり、中にはそれを理由に購入を断念する外国人旅行客もいるという。さらに、購入記録票をホッチキス留めするため、パスポートがその分、厚くなってしまう上、税関でそれを剥がす際にパスポートを傷めてしまうというトラブルも生じていた。

電子化によって大きく変わるのは、購入記録票の作成が紙ベースでなくなる点である。購入者や購入品の情報を電子データとして、国税庁のデータベースに送信する仕組みとなるので、紙の記録票をパスポートに添付することも不要になり、購入者誓約書も廃止される。

電子化後の手続きは③以降が変わる。<③購入記録情報を作成⇒④説明事項を伝える⇒⑤購入記録情報を国税庁に送信⇒⑥免税対象品を引き渡す⇒⑦購入記録情報の保存>という流れになる。税関では、購入者の出国時にパスポートをスキャンして購入記録情報を呼び出すだけでいい。

免税店は効率化が図れて、購入者は利便性が高まる

電子化により免税店は、手続きが効率化されて作業時間の短縮につながる。購入者を待たせる時間も減り、満足度が高まるだろう。さらに紙のコスト削減もメリットといえる。

また購入者誓約書は7年間の保管義務があり、購入者が多いドラッグストアなどは1日で段ボール数箱分もの量になり、専用の倉庫を借りているところもあるほど。こうしたスペース確保のコスト削減も大きい。

購入者にとっては、免税手続きの待ち時間が短縮されるだけでなく、パスポートが分厚くなることもなく、破損の恐れがないのも大きなメリットといえる。その結果、快適なショッピングにつながり、免税店の利用者の増加が期待できる。

承認送信事業者の選定と税務署への申請

電子化にあたっては、所轄の税務署長に届出書を提出するが、届出書には国税庁への電子データの送信方法を記載しなくてはならない。

システムを自社で構築することも可能だが、小規模な事業者や個人店にはハードルが高い。そうした免税店には、承認送信事業者と呼ばれる代行業者のサービスの利用が認められており、依頼する業者の選定を行うことが第一ステップだ。承認送信事業者は、国税庁のホームページに掲載されている。

届出書が受理されると、税務署から店舗ごとの識別符号が通知される。いわば、店舗のマイナンバーのようなものだ。

承認送信事業者と相談して、データを送信できる環境を整える。インターネット環境の整備も必要。機器は、POSレジ一体型、POSレジとの連携型などもあるが、手持ちのパソコンやスマートフォンにアプリを入れるだけの低コストで誰でも使えるシステムもある。

届出書の受付は、すでに2019年10月1日から始まっている。届出書の提出から識別符号の通知まで2週間前後かかるのが一般的だが、中には2カ月かかった例もあるので、早めの準備が望ましい。

桃太郎ジーンズ青山店

すでに識別符号の通知を受けて、電子化対応の準備も整っているのが、表参道に店を構える「桃太郎ジーンズ青山店」だ。

桃太郎ジーンズは、日本のジーンズ発祥の地、岡山発のジーンズブランドで、職人の技が生きる日本産ジーンズは、訪日旅行客にも人気が高く、世界各国から買い物客が来店する。免税売上げが全体の約3割を占めるという。

免税処理には、パスポートリーダーを接続したパソコンを使用。現在は、パスポートリーダーで購入者情報を読み取り、POSレジの購入品情報を手入力して、購入者記録票をプリントアウトしている。

渡邉啓介店長

同店の渡邉啓介店長は「免税処理に3~5分かかり、複数のお客様が重なるとお待たせしてしまうこともあるが、電子化により時間が短縮でき、お客様サービスの向上になるのではと期待している。段ボールで保管していた購入者誓約書がなくなるのも助かる」と電子化への期待を述べる。

準備に関しては、「電子化を視野に入れてオンラインにしたくらいで、あとは承認送信事業者に任せているので、店舗では特にやることがない。入力作業も今までと変わらないので、全スタッフが対応できる。」ということで、電子化への対応は万全である。

免税店と外国人旅行客へのPRに力入れる

課題として残るのは電子化のPR不足である。これまで電子化を認知していなかった免税店も2020年1月以降、周囲を見て、電子化への動きを始めたという。また、人手不足で免税店化を見送っていた店舗では、電子化によって手続きが簡単になるのであればと、免税店化を考える動きも出ているが、認知はまだまだである。

また、訪日旅行客へのPRも必要だ。移行猶予期間は、購入記録票が手書きの店と電子化された店が混在するため、パスポートに購入票の添付がなく、手元に記録が残らないことへの不安を感じる人や戸惑う人も出るかもしれない。さまざまなメディアを通じて、訪日旅行客に「電子化」を積極的にPRすることが重要になってくるだろう。